写真家 テリ・ワイフェンバック の国内外の美術館で初となる待望の大規模個展を開催

IZU PHOTO MUSEUMにて写真家テリ・ワイフェンバック国内外の美術館として初となる個展を開催
このたびIZU PHOTO MUSEUMでは、アメリカの写真家テリ・ワイフェンバック(1957年-)の、国内外の美術館として初となる個展を開催いたします。ワイフェンバックはメリーランド大学で絵画を学んだ後、1970年代より写真制作を始めました。過去に出版された15冊の彼女の写真集はこれまで高い評価を得てきました。
本展覧会は、2005年に写真集として発表された代表作のひとつである「The Politics of Flowers」と、ワイフェンバックがIZU PHOTO MUSEUMに長期滞在し制作したシリーズ「The May Sun」を中心に構成されます。
「The Politics of Flowers」は、2003年に最愛の母を亡くしたワイフェンバックが、パレスチナに咲く花を採集して作られた19世紀の押し花帳『Pressed Flowers from the Holy Land』と出会ったことを機に制作されました。この押し花帳に収められた花々は、紛争の絶えないパレスチナの地で生きることの過酷さや、他者の死とどのように向き合うことができるのかということをワイフェンバックに語りかけてきました。彼女は、押し花が語るその言葉をひとつひとつ汲み上げていきます。
また、初公開作品である「The May San」や、柿田川湧水(静岡県・清水町)で撮影された映像作品等も合わせ、約110点を展示いたします。
Terri Weifenbach(テリ・ワイフェンバック)
1957年アメリカ合衆国ニューヨーク市生まれ。メリーランド大学でファインアートを専攻し、1970年代から写真制作に転向。初の写真集『In Your Dreams』(Nazraeli Press、1997)で注目を集め、植物のある風景写真を収録した『Hunter Green』(Nazraeli Press、2000)やイタリアで撮影した『Lana』(Nazraeli Press、2002)等、独特の風景描写と美しい装丁から成る15冊の写真集をこれまでに手がけてきた。
2013年に写真集『Stilll』(Super Labo)を出版、2014年にはIMA galleryにて川内倫子と共に「Gift」展を開催。
現在はジョージタウン大学で教鞭を執る。2015年にはグッゲンハイム奨学金を授与。ワシントンD.C.在住。
- 展覧会名
- TERRI WEIFENBACH
The May Sun
- アーティスト
- テリ・ワイフェンバック
- 会期
- 2017年4月9日(日曜日)〜8月29日(火曜日)
- 休館日
- 水曜日
- 開館時間
- 10:00〜18:00 ※最終入館は閉館の30分前まで
- 会場
- IZU PHOTO MUSEUM
- チケット情報
- 大人800 円(700 円)/ 高・大学生400 円(300 円)
小・中学生以下無料 *( )内は、20 名様以上の団体料金
- お問合わせ
- TEL:055-989-8780
1.国内外の美術館で初となる待望の大規模個展
テリ・ワイフェンバックはメリーランド大学で絵画を学んだ後、1970年代より写真制作を始め、自然風景をモチーフとして作品を制作してきました。彼女の作品は、絵画のように鮮やかな色彩とディファレンシャル・フォーカシング* が主な特徴となっており、初の写真集『In Your Dreams』(Nazraeli Press、1997年)以来、15冊の彼女の写真集はこれまで高い評価を得てきました。本展覧会は、国内外の美術館で初となるワイフェンバック待望の個展です。
*ディファレンシャル・フォーカシングとは、レンズの焦点深度を極度に浅くすることによって、焦点を合わせたものを際立たせる効果をもたらす技法。

2.「The Politics of Flowers」シリーズの初展示
本展覧会では、2005年にonestar press 社より写真集として発表されたシリーズ「The Politics of Flowers」を国内外で初めて展示いたします。
2001年にはアメリカで9・11同時多発テロが勃発。その2年後の2003年、ワイフェンバックは最愛の母と死別します。その頃、パレスチナの押し花帳『Pressed Flowers from the Holy Land』と出会ったワイフェンバックは、そこに収められた押し花が語る言葉に耳を傾けます。
世界各地で頻発するテロや紛争、そこから生まれる移民問題など、いまだ複雑な問題を抱える現代社会に、ワイフェンバックの写し出す押し花の言葉は、多くのことを語りかけてきます。
ー「The Politics of Flowers」に寄せて|テリ・ワイフェンバック
私はいつも、難しいものごとを理解する手助けとして写真を撮ってきた。・・・(パレスチナの押し花帳を見つけたとき)私は、母との死別と向き合うことの困難さについてあらためて考え、また紛争の絶えないパレスチナの地に思いを馳せた。・・・身近な家族や子どもを失い、また子どもが傷つけられることを、そこで生きる人々がどのように感じるか、私は想像できていなかった。この荒れ果てた土地で摘まれ、押し花にされた花々は、そこに生きる人々のことを私に語ってくれた。・・・しかし私はそれを声高に語るのではなく、注意深く伝えたかった。それは語られるのではなく、観者自身が感じるべきである。

3.最新作「The May Sun」シリーズを紹介
IZU PHOTO MUSEUMに長期滞在し制作されたシリーズ「The May Sun」を初公開いたします。「The May Sun」というタイトルはアメリカの詩人ウォレス・スティーヴンス(1879-1955 年)の詩に由来しています。彼の詩では、闇に包まれた世界に暖かい陽射しが射し込むことが、人の悲しみの記憶に光が射し、新たな輝きをもたらすことの比喩として表現されています。ワイフェンバックは、風や光の動きにともない常に変化し続ける自然風景のなかに、スティーヴンスの詩と通じるような光景を見出します。
4.ワイフェンバック初の試みとなる映像作品
写真と映像の組み合わせからなる作品2 点を展示いたします。映像作品は、ワイフェンバックにとって初の試みとなります。これらの作品は柿田川湧水と富士山御殿場口で撮影されました。映像は、豊かな自然の中の小さな変化に目が向けられ、またそれに伴う連続写真は、常に変化する自然の一瞬を切り取り、糸を紡ぐような水流の道筋や雲の表情をとらえています。