ART / EVENT

「木彫り熊の申し子 藤戸竹喜 アイヌであればこそ」2021年7月17日(土)より開催

東京ステーションギャラリーでは、「木彫り熊の申し子 藤戸竹喜 アイヌであればこそ」を2021年7月17日(土)より9月26日(日)まで開催いたします。木彫り熊の職人だった父親の下で12歳の頃から熊彫りを始め、やがてその才能を開花させた藤戸竹喜の作品には、大胆さと繊細さ、力強さと優しさといった、相反するものが同居しています。本展は、その初期作から最晩年にいたる代表作80余点によって、この不世出の木彫家、藤戸竹喜の全貌を、東京で初めて紹介する機会となります。

《白熊の親子》(部分)、1999年、個人蔵、撮影:露口啓二

展覧会概要

北海道美幌町で生まれ、旭川市で育った藤戸竹喜(ふじとたけき/1934-2018)は、木彫り熊の職人だった父親の下で12歳の頃から熊彫りを始めました。やがて阿寒湖畔に移り住み、この地で才能を開花させて、数多くの木彫作品を生み出します。藤戸竹喜の作品の特徴は、大胆さと繊細さ、力強さと優しさといった、相反するものが同居していることにあります。一気呵成に彫り進められる熊や動物の姿は、まるで生きているかのように躍動し、旺盛な生命力を感じさせる一方で、仕上げに行われる毛彫りは細密で、硬い木であることを忘れさせるような柔らかな質感を生み出しているのです。本展は、その初期作から最晩年にいたる代表作80余点によって、この不世出の木彫家、藤戸竹喜の全貌を東京で初めて紹介する機会となります。

熊からすべてを教わった。

藤戸竹喜は制作にあたって一切デッサンすることがなかった。丸太に簡単な目印を入れるだけで、あとは一気に形を彫り出していく。それはあたかも木の中に潜んでいる形が予め見えていて、それをただ取り出してやっているだけ、というかのようであった。

「じっと木を見ていると中から姿が出てくるのです。見た物が頭の中に入り、それが木の中に浮かび、それを彫り出していく。上手に周りの木を取り除いて中のものを出してあげる、という具合です。」

藤戸はこの能力を、ただひたすら熊を彫り続ける中で身につけた。繰り返し、繰り返し彫ることで、熊の形態を、熊を取り巻く空間を理解していったのである。

「完璧なものを作るのは、すごく難しい。一つのものを完成させるっていうことは、すごく難しい。俺にとっては、熊がそうだ。熊を完璧にできたっていうことは、等身大にしても、狼にしても、伝わるんだよ。だから熊がすべての基本。」

私は根っからの熊彫りです、親父の時代から。

藤戸竹喜は1934年に北海道の美幌町で生まれた。両親は共にアイヌ民族で、父の竹夫は木彫り熊の職人だった。藤戸は12歳で父に弟子入りする。まさかりで切った木の塊を渡され、それを自分なりに削る。父はそれを見て、気に入らなければ、火にくべてしまったという。

「父は手取り足取り彫り方を教えてくれるようなひとではありません。」
「決して褒めない。何が悪いかも伝えず、作品を見た瞬間にまさかりで割られたことも何度もあります。」

そんな繰り返しの中で熊彫りの技を習得していったのである。15歳の時には阿寒湖畔の土産物屋の店先で、一人前の職人として熊彫りの実演を始めた。丸刈りの少年が巧みに熊を彫る姿は多くの観光客を惹きつけたという。その後、道内各地の観光地で修業を重ね、26歳の時に阿寒に住み着き、30歳で独立して自らの店「熊の家」を構えた。

「木は生きています。だから、どんなに小さな作品を作るときでも、必ずカムイノミ(神への祈り)をしてから彫り始めます。原木にお願いして彫らせてもらうのです。」

34歳の時に依頼されて観音立像を制作したことが、藤戸の制作の大きな転機となった。熊以外を彫ったことがなかった藤戸は、この時、京都と奈良に行き、一週間にわたって仏像を見続け、目に焼きつけたという。そして半年間、この観音立像だけに没頭して作品を作り上げた。これを契機に藤戸の制作は大きな広がりを見せることになる。熊だけではなく、人物、狼や鹿、海洋生物など、さまざまなモチーフが、藤戸の手によって命を吹き込まれ、木の中から彫り出されていった。特にアイヌ民族の先人たちの姿を等身大で彫った作品群は、精緻な写実的描写の中に、威厳に満ちた存在感を表現しており、見る者を深い感動に誘わずにはおかない。

アイヌに生れたことを誇りに思う。

17歳の時、藤戸は北海道大学植物園で狼の剥製を見て、「狼を作りたい」と父親に告げる。しかし父は「熊も一人前に彫れないのに何を言っているのか」と一喝した。それ以来、狼を彫ることが藤戸の大きな目標となった。満足のいく狼を彫ることができた時には70歳になっていた。藤戸が80歳を過ぎてから制作したのが〈狼と少年の物語〉である。胸にあたためてきた物語を19点の連作として表現したものだ。狼(エゾオオカミ)は、明治29年頃に絶滅したといわれる。「動物とアイヌと和人の物語を残したい」という藤戸の強い願いが込められた作品である。

80歳を超えてなお、旺盛な制作活動を続け、北海道文化賞、文化庁地域文化功労者表彰、北海道功労賞などを受賞、海外を含む多くの展覧会に出品するなど、対外的な評価も高まっていった。2017年には札幌芸術の森美術館と、国立民族学博物館(大阪)で大規模な個展も開催された。さらなる活躍が期待されたが、2018年、84歳で惜しまれつつ亡くなった。アイヌ民族として、熊彫りとして、誇りをもって生きた人生であった。

*本リリース中の藤戸竹喜の言葉は
「私の中の歴史 アイヌ民族の彫刻家 藤戸竹喜さん」『北海道新聞』(2014年9月29日~10月14日)および、在本彌生・村岡俊也『熊を彫る人』(小学館、2017年)より引用しました。
*「アイヌであればこそ」は、父親の言葉で、藤戸竹喜も同じ気持ちを受け継いでいました。

《木登り熊》 2017年、個人蔵、撮影:佐藤克秋

《語り合う熊》 2018年、個人蔵、撮影:佐藤克秋
《オジロワシ》 1978年、個人蔵、撮影:露口啓二

開催概要

会期:2021年07月17日(土)〜2021年09月26日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
時間:10:00〜18:00
金曜日 10:00~20:00 *入館は閉館 30 分前まで
休館日:7/19(月)、8/10(火)、8/16(月)、8/23(月)、9/6(月)、9/13(月)
入館料:一般 1,200 円、高校・大学生 1,000 円、中学生以下無料
*障がい者手帳等持参の方は 100 円引き(介添者 1 名は無料)
※チケット購入方法の詳細は決まり次第、当館ウェブサイトでお知らせします。
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催内容が変更になる場合があります。
※本展は当館のみで開催されるものです。
URL:http://www.ejrcf.or.jp/gallery

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