【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち

人間がAIに勝つためには「読解力」を磨くしかない
先日惜しまれつつ世を去ったホーキング博士は、数年前に「完全な人工知能(AI)が実現すれば、人類は終焉を迎える」という意の発言をしていた。いわゆる「シンギュラリティ」、つまりAIの進化が人間のそれを上回るという「技術的特異点」のことだ。
しかし、東大合格を目指した「東ロボくん」の開発者である著者は言う。「AIが人類を滅ぼす?……滅ぼしません! 」「シンギュラリティが到来する?……到来しません! 」。それどころか、東大合格すらAIには無理だろうと言うのだ。
とはいえ、個人的にあまり笑っていられない。「東ロボくん」は既に私の勤める大学の入試は十分に突破する偏差値を模試で叩き出している。では、MARCHレベルと東大との入試の間に、AIが決して越すことのできないどのような溝があるというのか。
それは国語、読解力だ。AIが自然言語を読みこなすことは金輪際できないというのだ。その不可能性の仕組みは本書にあたってもらいたいが、ここでほっと胸を撫でおろすのも束の間、シンギュラリティよりもっと切迫した問題があった。
実は中高生の多くが、「東ロボくん」以下の読解力しか持っていないということが調査から浮かび上がってきた。二つの文章の意味が同じかどうかを判定する問題で、中学生の正答率はなんと57%。しかも、それを聞いたある新聞記者が、57%もあるなら悪くないんじゃないかと言ったそうで、もうこうなると日本人の読解力は壊滅的と言わざるを得ない。二択の問題なら誰でも五割はとれる。
他のタイプの問題でも、サイコロを転がすのと同じ程度の正答率しかなかったというこの若者の読解力の現状で、小学校からプログラミングや英語が導入されようとしているが、著者は言う。「一に読解、二に読解」と。そうしなければ、AIの進化を待たずに人間が職場をAIに明け渡さねばならなくなる日が遠からず訪れることになるだろう。
評者:伊藤氏貴
(週刊文春 2018年04月12日号掲載)
読解力が世界を支配
藤井聡太が羽生善治を破った朝日杯。やっぱり将棋は人間対人間がおもしろい。いくら強くても、コンピュータでは味気ない。
『AIvs.教科書が読めない子どもたち』は、AI(人工知能)と人間の現状と未来についての本である。著者は国立情報学研究所教授で数学者。東大合格を目指すAI「東ロボくん」の育ての親だ。この本には、同プロジェクトから見えてきたAIの可能性と限界、そして人間との関係が書かれている。
良いニュースと悪いニュースがひとつずつ。まず、良いニュースから。AIが人間を超える、いわゆるシンギュラリティが到来することはない、と著者は断言する。なぜなら、AIはコンピュータであり、コンピュータは四則計算をする機械でしかないから。どんなに高度になっても、その本質は変わらない。
たとえば東ロボくんの偏差値は57・1。東大は無理だけど、MARCHなら入れそうだ。ただし国語や英語は苦手だ。なぜなら、AIは意味を理解しないから。読解力がないのである。
しかし、これで人類の未来は明るいぞなんて安心してはいられない。AIでもできる仕事は、この先どんどん奪われていくのだ。これが悪いニュース。
ならばAIにできない仕事をやればいい、と思うだろう。ところがこれもお先真っ暗だ。全国読解力調査によると、教科書の文章を正しく理解できない中高生が多いというのである。なんと3人に1人が簡単な文章すら読めない。これからの世界は、読解力がある一握りのエリートに支配されてしまうのか。
評者:永江朗
(週刊朝日 掲載)
東ロボくんは東大には入れなかった。AIの限界ーー。しかし、”彼”はMARCHクラスには楽勝で合格していた!これが意味することとはなにか? AIは何を得意とし、何を苦手とするのか? AI楽観論者は、人間とAIが補完し合い共存するシナリオを描く。しかし、東ロボくんの実験と同時に行なわれた全国2万5000人を対象にした読解力調査では恐るべき実態が判明する。AIの限界が示される一方で、これからの危機はむしろ人間側の教育にあることが示され、その行く着く先は最悪の恐慌だという。では、最悪のシナリオを避けるのはどうしたらいいのか? 最終章では教育に関する専門家でもある新井先生の提言が語られる。
目次
はじめに
第1章 MARCHに合格――AIはライバル
AIとシンギュラリティ
偏差値57.1
AI進化の歴史
YOLOの衝撃――画像認識の最先端
ワトソンの活躍
東ロボくんの戦略
AIが仕事を奪う
第2章 桜散る――シンギュラリティはSF
読解力と常識の壁――詰め込み教育の失敗
意味が理解しないAI
Siri(シリ)は賢者か?
奇妙なピアノ曲
機械翻訳
シンギュラリティは到来しない
第3章 教科書が読めない――全国読解力調査
人間は「AIにできない仕事」ができるか?
数学ができないのか、問題文を理解していないのか?――大学生数学基本調査
全国2万5000人の基礎的読解力を調査
3人に1人が、簡単な文章が読めない
偏差値と読解力
第4章 最悪のシナリオ
AIに分断されるホワイトカラー
企業が消えていく
そして、AI世界恐慌がやってくる
おわりに
【ビジネス書大賞2019】『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著 東洋経済新報社)が大賞に決定!
<最終選考会での選考委員による評>
大賞『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』
・AI、いやAI技術の発達で何が起きるのか、それを考えるために読むべき本。AIで仕事はなくなるのかといった疑問に、論理的かつデータに基づきながら丁寧に答えていて、専門知識がなくてもよく理解できる。
・この本こそ、今日本で最も読まれるべき著書だと思います。AI、シンギュラリティに対する誤解を解くだけでなく、むしろ著者が訴えたいのはAIを通して何が起こるのか、もっと本質的なことです。いくつかの仕事がなくなるというレベルではない企業の“儲け方”の根本的な変化、淘汰され得ない人材とは―—そしてその背景に日本の教育と、それによって生み出された人材の危機を訴える新井先生のすごみに圧倒されました。
・甘く見ていた。ナメていた。タイトルから、新井先生が色んなところで言っている「子供の読解力の話だろ」と思っていたら…AIという無機物から人類の可能性と限界と、現在われわれが抱える問題を逆照射する、「どう生きるべきか」の指南書だった。読みやすさの点からも、ビジネスマン以外の人も読むべき現代の必読書だと思う。
・いわゆる「シンギュラリティ」は来ないと断言するが、勤労者の半数が失業の危機にさらされるだけでなく、企業も淘汰される危険がある時代がすぐそこに迫っていることを、数学者としての専門的な知見と経験を生かして、具体的にわかりやすく説いている。重要なことは人間らしく、生き物らしく柔軟になること、そして読解力を磨くこと。一読して暗い気持ちになり、今のところの読解力向上の因子が見つからないことに嘆息しつつも、戸田市のRSTへの具体的な取り組みに明るい気持ちになり、最終章の最悪のシナリオで暗い気持ちに戻りつつ、最後に一筋の光明を感じさせる。
日本中を揺るがした衝撃の書、28万部突破!
TBSテレビ「報道特集」(2019年2月9日放送)に著者出演、大反響! !
教育関係者や親たち、ビジネスパーソンから圧倒的支持!
【怒濤の受賞ラッシュ! 】
第27回 山本七平賞
第39回 石橋湛山賞
第27回 大川出版賞
第66回 日本エッセイスト・クラブ賞
ビジネスリーダー1万人が選ぶベストビジネス書 TOPPOINT大賞 2018年上半期
日本の人事部 HRアワード2018 書籍部門 優秀賞
【テレビで話題! 】
★TBSテレビ「報道特集」 2019年2月9日
★TBSテレビ「林先生が驚く初耳学! 」 2018月4月1日
★NHKスペシャル「マネー・ワールド」 2018年10月7日
★BSフジLIVE「PRIME NEWS」 2018年7月2日
★日本テレビ「ZIP!」2018年4月18日
★TBSテレビ「上田晋也のサタデージャーナル」2018年4月14日
★TBSテレビ「王様のブランチ」 2018年3月17日
【メディアで書籍紹介、著者インタビュー等多数掲載されました! 】
★読者が選ぶビジネス書グランプリ2019 リベラルアーツ部門第2位
★国語教室 2019年2月号(第109号)
★文藝春秋 2019年3月号
★埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2018 第6位
★産経新聞 2019年2月13日
★朝日新聞夕刊 2019年2月6日
★正論 2019年2月号
★毎日新聞 2019年1月28日
★高知新聞 2019年1月23日
★週刊文春 2019年1月17日号
★プレジデント 2019年1月14日号
★BRUTUS 2019年1月1・15日号
★女性セブン 2019年1月3・10日号
★anan 2019年1月2・9日号
★Voice 2019年1月号
★紀伊國屋じんぶん大賞2019 読者と選ぶ人文書ベスト30 第25位
★ITエンジニアに読んでほしい! 技術書・ビジネス書大賞2019 BEST10選出
★東京新聞 2018年12月30日
★毎日新聞 2018年12月16日
★読売新聞夕刊 2018年12月10日
★たまひよ 2018年11月18日、11月22日
★AERA 2018年11月19日号
★読売新聞 2018年11月6日
★福島民友新聞 2018年11月11日
★朝日新聞 2018年10月17日
★聖教新聞 2018年9月2日
★THE BIG ISSUE JAPAN 343号(2018年9月15日)
★毎日新聞 2018年9月9日
★プレジデント 2018年10月15日号
★文化通信 2018年8月27日
★日本経済新聞電子版 2018年8月17日
★日本経済新聞夕刊 2018年8月6日~8月13日
★北海道新聞 2018年6月30日
★週刊ダイヤモンド 2018年7月14日号
★季刊読者のいずみ 2018年6月号
★週刊現代 2018年7月21・28日号
★サイゾー 2018年7月号
★VERY 2018年7月号
★PRESIDENT 2018年6月18日号
★文化放送「くにまるジャパン極」2018年7月2日
★ほぼ日刊イトイ新聞 2018年5月11~18日
★ニューズウィーク日本版オンライン 2018年5月11、17日
★婦人公論 2018年5月22日号
★週刊東洋経済 2018年3月17日号、5月12日号
★産経新聞 2018年4月15日
★文藝春秋 2018年5月号
★AERA 2018年4月16日号
★週刊文春 2018年4月12日号
★読売新聞 2018年4月1日
★日本経済新聞夕刊 2018年3月20日
★毎日新聞 2018年3月18日
★週刊朝日 2018年3月16日号
★週刊エコノミスト 2018年3月13日号
★日本経済新聞 2018年3月3日
★週刊ダイヤモンド2018年 3月3日号
★週刊現代 2018年3月10日号
★東京新聞 2018年2月23日
★TBSラジオ「伊集院光とらじおと」 2018年2月22日 ほか